幕末の風雲児・坂本龍馬と、現代の革命家スティーブ・ジョブズ。生きた時代も場所も全く異なる二人が、もしも語り合ったら――。そんな壮大な「もしも」を実現した動画が、今、静かな感動を呼んでいます。AIによって再現された二人の偉人による時空を超えた対話は、現代を生きる私たちに何を語りかけるのでしょうか。
「死」を意識することの共通点
動画は、龍馬の「わしが生きた幕末はいつ首が飛んでもおかしくない時代じゃった」という言葉から、二人の意外な共通点を浮き彫りにします。常に死と隣り合わせだった龍馬。そして、ジョブズもまた、有名なスピーチで語ったように「もし今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることを本当にやりたいだろうか」と自問自答する日々を送っていました。
ジョブズは語ります。「死は人生における最大の発明だ」「自分もいつか死ぬということを覚えていれば、本当に重要なことだけが残る」。
この死生観は、明日の命も知れぬ中で日本の未来のために駆けずり回った龍馬の生き様と、深く共鳴します。死を意識するからこそ、人生の時間は有限であり、本当に大切なことを見極め、大胆に行動できる。時代は違えど、世界を変えた二人の根底には、この哲学が流れていました。

情熱こそが、事を成す原動力
対話の中で、龍馬はジョブズに問いかけます。「どうやったらそんな情熱を持ち続けられるんじゃろうか」。多くの人が目の前の仕事に満足したり、諦めてしまったりする中で、いかにして大きなことを成し遂げるのか。
ジョブズの答えは、驚くほどシンプルでした。
「心から愛せる仕事でなければ、やり抜くことなどできないからだ」「妥協するな」。
成功のためには途方もない努力と忍耐が必要であり、それを支えるのは、自分がやっていることへの「愛」に他ならないと彼は説きます。一度は自ら作った会社を追放された経験さえも、「最高のできごとだった」と振り返るジョブ-ズ。全てを失ったことで、再び初心者のように純粋な情熱だけで再出発できたと語る言葉は、一度は脱藩し、全てを捨てて日本のために立ち上がった龍馬の姿と重なります。

Stay hungry, Stay foolish. – 愚か者であれ
対話の最後に、龍馬はジョブズの最も有名な言葉「Stay hungry, Stay foolish」の真意を尋ねます。
Stay hungry(ハングリーであれ) とは、「決して満足するな」ということ。成功は時として人間を保守的にしてしまうが、常に渇望し、次の高みを目指し続けることの重要性を説きます。
そして、Stay foolish(愚か者であれ) とは、「常識や定説を疑え」ということ。専門家が「不可能だ」と言っても、自分の直感を信じて突き進む。周りから「バカだ」と思われるようなクレイジーなアイデアこそが世界を変えるのだと、ジョブズは語ります。
「君も当時の常識からすれば、とんでもない愚か者だったんじゃないか?」
ジョブズのこの問いに、龍馬は高らかに笑います。「違いねえぜよ!」。
常識という名の壁を壊し、誰もが見向きもしなかった夢を追いかけた「大馬鹿者」たちが集まって、新しい時代は作られていく。龍馬が夢見た「日本の新しい夜明け」と、ジョブズが作り上げた「新しいテクノロジーの夜明け」。その根底にある魂は、驚くほど似ていたのです。

おわりに
この対話は、私たちに改めて問いかけます。
「君は、今の人生に満足してしまっていないか?」
「常識に縛られ、賢い人間になってはいないか?」
時代を切り拓くのは、いつの世も、飽くなき探究心と、常識を恐れない「愚か者」の情熱なのかもしれません。日本の夜明けは、まだ先かもしれません。しかし、私たち一人ひとりが心の中に「龍馬」と「ジョブズ」を宿すことで、その光はより一層輝きを増すのではないでしょうか。
まこと、面白い話を聞かせてもらった――。動画の最後、満足げな龍馬の顔が、そう語りかけているようでした。
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